ウィング車両屋根の安全装置
平成14年7月31日、ウィング車両のメカロック(インターロック)装置に不具合が発生し、天井屋根の閉鎖操作を忘れ車両を発進し事故が発生しました。
弊社ではこの事故の反省と教訓を踏まえ、同装置の安全性と構造を更に向上したものへと変更するとともに、概要をご紹介します。
従来のメカロック(インターロック)装置とは以下のようなものでした。
ウィング車両 メカロック(インターロック)装置の概要
貨物車両の種別の中にはウィング車と呼ばれる貨物積載ゾーン(荷台)の天井を電気や油圧により開閉できるものがある。この車両の利便性は、雨天時でも積載が易く、また荷台横部が開放する為、容易に積み卸し作業等が行えることである。しかし、この貨物積載ゾーン(荷台)の天井を開放するということは、一般に言う車両制限令などの高さ(3.8m以下)を大きく超えることになり、もちろん開放したままの状態で走行することは大きな事故を引き起こす要因となる。
多くの車両製造メーカーなどでは、この開放作業時の安全性を考え、また多くの荷主企業、輸送企業からの要請もあり、同形状車両の天井開放時のエンジン始動不可装置を考案した。これがメカロック(インターロック)装置と呼ばれるものである。
構造は簡単なものであり、車両荷台天井部にスイッチまたはセンサーを設け、この回路から入力された信号または電気を元に天井部の開閉を判断し、エンジンスタータリレーの断接切替を行うといった回路である。
天井開放時、開放を検知した天井スイッチ(またはセンサー)は信号(または電気)を発信させエンジンキーよりスタータリレーへの電流回路を断接する。ここに別リレーを用いているものもあれば、同リレー電流回路を切断後、天井スイッチ(またはセンサー)に引き回しているものもある。
ただし、これまでの装置には次の課題があった。
課題1
天井開放時、開放を検知した天井スイッチ(またはセンサー)によりエンジンキーからスタータリレーへの電流回路は断状態となりスタータリレーは物理的に電流が流れず機能しない(当然)。しかし、エンジンがすでに作動している状態で、天井を開放する動作は可能であり、エンジン作動状態→ウィング開放→積み卸し作業→ウィング閉め忘れ→走行→事故発生ということがあった。これは構造的にエンジンスターターが回せないというだけのものであったため。
課題2
貨物積載運行中、なんらかの状態で積載貨物が動き、その応力または荷重により天井を押し上げ。または開く方向への圧力が荷台内部よりかかり、または車体の停止状況によっては、車体の傾き・ねじれなどによって、検出スイッチ回路が働き、休憩・停車地点においててエンジンを停止後、再びエンジン始動を試みた場合、始動困難な状態に陥り、最悪緊急整備の必要が発生した。しかも、荷台天井を押し上げるような圧力の場合、荷崩れなどの心配もあり、路上への落下などを考慮すると容易に荷箱天井を開放させること自体が難しく、緊急時の整備対応にも困難があった。
新メカロック(インターロック)装置の考案
従来の問題点・課題1を考慮しつつ考えたものは、ウィング開放中は必ずエンジンが停止するということ。
このエンジンを外部的に停止させるという事については次のように考えた。
天井開放時、開放を検知した天井スイッチ(またはセンサー)による信号(または電気)発信を利用し、エンジン制御回路の一部、エマージェンシー回路を利用する。
エマージェンシー回路とは、多くの大型貨物自動車に備えられた機構で、緊急時にエンジンを電気的に停止させるシステム。エンジンコントロールユニット(ECU:通称コンピュータ)より燃料噴射ポンプ制御回路につながる回路の一部に設けられ、通常は非常スイッチを引くなどの行為によりエンジンを停止させるもの。
このコントロール回路(非常停止回路)を分線しまたはリレー回路を組み合わせることで、非常用電流経路段接の制御を行えること、また新たな回路へ接続することで低コストでエンジンを外部的に停止させることを実現した。
これにより、天井開放時、開放/閉鎖状態を検知する為にスイッチ(またはセンサー)を用い燃料噴射ポンプの電気的停止を行う。(ウィング天井開放→燃料噴射ポンプ停止→エンジン停止)
ただし、考えられる問題点が以下の2点として現れた。
問題点1/スイッチの信頼性
今回の装備車へのスイッチはオムロン製のマイクロスイッチを採用した。課題2の問題をできるだけ少なくする為に。従来品の多くは押し込むタイプのスイッチが主であり、接点までのストロークの長さや作動電流による接点の焼損などの問題があり、断接切替がうまく行えないものが多々あった。
問題点2/スイッチ破損時の保護回路
しかしどんなにスイッチの信頼性があがろうと、破損という事態は考慮しなければならない。もしも走行中に同スイッチの破損が起こったとしても即時エンジン停止という災害を起こさせないため車速センサーを誘導起電としたリレーによる保護バイパス回路を作成。
上記2点の問題改善により、通常走行時には保護バイパス回路が働き、スイッチ損傷時のエンジン停止を免れるものとした。しかし、絶対ということは無いから今後も改良が必要である。2重3重の保護回路の作成は、初期目標(ウィング天井開放検知→エンジン停止)という相反するものの中、試行錯誤を繰り返している。
2003年1月、同回路の試験より6ヶ月が経過した時点での見直し個所は次のとおり。
●ウィング天井開放時、視覚的に訴えられる回路の追加
●開放検出スイッチより検出される状態をリレーにより感知し、非常点滅回路(ハザードランプ)を点灯。
●車内、ブザーを設置し、開放時にエンジンキーがONまたはACC状態であればブザーを鳴らす。
●キルスイッチの作成
キルスイッチとは?
結局、エンジン停止できたとしても旧来の倉庫群では、どうしても天井開放状態のままホーム付けしなければならない場合もあり、それではこのインターロック回路は意味をなさないものになってしまいます。
しかし、現実にそういう倉庫もあるわけで、仕方なく天井を開放しても動けるようにと、この回路も盛り込みました。ただし、閉め忘れという絶対にあってはならないことが怖くって、運転室上また、車両の外側からみて異常行為なんですよという状態をつくりだしたくて、ウィング開放時にエンジンキーの状態を検出し、非常点滅回路や運転室内ブザーを制御し視覚的・聴覚的に異常行為の途中だと訴える回路にしたかった点があります。そして最大の問題として、これ以上我々運送業者のコストアップの要因を作ってはいけないという事も考慮しなければなりません。
我々、運送業者に取っては当たり前と思える安全回路は、当然メーカーサイドでも積極的に対応をして頂きたいとの願いと、特許などでがんじがらめになっていてはいけないとの思いで考え出しました。
当社で調べたところ、特許庁でトランスミッションのニュートラルセンサーを使った同回路のようなものもありましたが、必ずエンジンを停止させたとしても具合が悪い場合もあり、且つ回路的には簡単で、各車両メーカーまた車体メーカーでの互換性を十分に考慮し、複雑でなく、低コストなものに仕上がればと今後も研究していくつもりです。お問合せ応援有難うございます。頑張ります。
ウィング車屋根開放時エンジン停止ユニット(インターロック装置)の製作コストについて
スイッチ・リレー・配線使っても1万円かかりません。いつの日か、こういう安全回路が装備され、ウィング開放時の事故が無くなる事をねがいつつ掲載いたします。